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贈りものって難しい -父の仕送りは不味かった-

エッセイ風

我が家の家計がもっとも逼迫していたころ、父が米を送ってくれたことがある。

なんてありがたい親心。
もちろん喜んでその米を炊いて食べてみた。

…おいしくない。

気のせいか?……いや、やっぱりおいしくない……。

米を見てみる。

なんとなく小汚くて、割れた米粒もいっぱい入っている。

要するに古い米、古米と思われた。
確か、袋にはブレンド米とも書かれていたと思う。

米の不味さには、夫もすぐに気が付き「これ、おいしくない」と、もらした。

が、せっかく父が送料までかけて送ってくれたものである。

にがりを入れたり、はちみつを入れたり、料理酒を入れたりと、いろいろ工夫してみたが、どうにもおいしくない。

やっとのことで食べ終わったころ、またもや父が米を送ってきた。

やはり、おいしくない。
というか、はっきり不味い。

そのころ親しくしていた知人に「試しに食べてみてくれる?」と、ちゃんと不味い米であることをおことわりしたうえで、何合か消費に協力してもらった。

感想を聞いてみると、

「食べられなくはないけど、不味かった」

とのことで、つまり、自分の味覚がおかしいわけではないと確信した。

となると、父はいったいどういうつもりで、こんな不味い米を送ってくるのか?という疑問が湧いた。

父はこの米をおいしいと思っているのか?
我が家でも、米は単一米の一番安いものしか買っていなかったが、ここまで不味かった米はない。
むしろこんな不味い米を、父はいったいどこで購入しているのだろう??

不味い米の仕送りが3回目のころだっただろうか。
とうとう夫が「もう俺は、この米は食わない」と言い出した。

正直、私も限界だった。
どんなおかずを作っても、不味い米がすべて台無しにしてしまうのである。

もう断ろう。
父の親切はありがたいが、この米を食べるぐらいなら家計が貧しくとも自分で買う。

ちょうど両親と会う機会があったため、非常に後ろめたかったが、はっきりと断ることにした。
聞けば、あの米はやはり古米で安く売っていたものだという。

さすがに直接父には言いづらいので、母に気持ちを伝え、母から言ってもらうことにした。

すると案の定、父から説教の電話があった。

「こっちは親切で、重い米を送料まで出して送っている。そっちは家計が苦しいのだから、贅沢を言わず、多少不味くてもがまんして食べるべきだ」

要約するとこんな感じだが、もう思った通りの説教だった。

そして、とてもがっかりした。

父の子供時代はド貧乏で、母と結婚したばかりのころも、寝転がれば隙間から夜空の星が見えるような家に住んでいたという苦労人だ。
子供のころ、貧しいばかりに盗みを疑われたという話は今でも覚えている。

貧しいとは、みじめなことでもある。

その貧しさを知っているはずの父から、あんな言葉を聞くとは。

あなたの送った米が、娘をみじめな気持ちにしていることに気づいていないとは……。

「お父さん、私はあの米を食べると、すっごくみじめな気持ちになるの。だからって高い米を送ってくれとか言わない。気持ちだけでいい。自分で買うから、もう送ってくれなくていいから」

父の米の仕送りは止まり、私はスーパーで普通の米を買った。

炊いたご飯を嚙みしめながら、やっぱりあの米は不味かったんだなあ…と、しみじみ思ったのだった。

忘れられない、父と私の貧乏エピソードである。

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