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【雑記】花火大会って好きじゃない

エッセイ風

私は花火大会って好きじゃない。

なぜなら、わびしい思い出ばかり重なっているからだ。

 

新卒で入社した会社は印刷会社で、所在地の市でもっとも大きな花火大会用のうちわを印刷していた。

なぜかその印刷したうちわ配りに駆り出され、めちゃくちゃ疲れた…というのが一つ目。

夕刻まで普通に仕事したあと現場まで車で運ばれ、でかい段ボールいっぱいうちわを全部配ったら終了だったのだが、ものすごい人波の中でのうちわ配りは想像以上に大変だった。

終わった後で先輩に「段ボールの横で『ご自由にどうぞ~』と言っていればいいんだよ」と言われ、先に教えてくれよ…と思った覚えがある。

 

二つ目は、結婚して何年目かに、夫婦喧嘩して一日だけ実家に帰ったときのこと。

実家へは電車で30分。
傷心を抱えて乗り込んだ電車はまだ、帰宅するサラリーマンたちで混雑していた。

その電車が河の鉄橋に差し掛かったとき、車窓から打ち上げ花火が次々に打ち上がるのが見えた。

そう、その日はたまたま花火大会の日だったのだ。

走る電車の中から打ち上げ花火を見たのは、それが初めてだった。

 

三つ目は、リーマンショックの煽りを食らい、我が家の家計がとても苦しかったころのこと。

私はダブルワークをしていた。

7時~15時まではコンビニで、16時~20時まではクリーニング店で働くというサイクル。

当時は今より体調を崩しがちだったが、病院へ行くためには働いて診察費を稼がなければ…というぐらいには貧乏で、歯痛を一か月近く我慢しながらダブルワークしていたこともある。
しかもクリーニング店がまあまあブラックで、30分程度のサービス残業はしばしばあった。

花火大会のその日、河の鉄橋の歩行者用通路には、見物客が大勢並んで花火を眺めていた。

その横を私はよそ見をする余裕もなく、疲れた体に鞭打って帰路の自転車を漕いで通り過ぎた。

 

そして四つ目は、記憶も新しい2017年8月に、長年勤めていたコンビニが閉店したときのこと。

閉店する店なので、当然新たに商品が入荷することはなく、陳列棚はどんどん空きが出てくる。
閉店の憂き目にあったことがある人にはわかると思うが、たくさんの商品が並んでいた棚がスカスカになってくるのを見るのは本当に寂しいものだ。

閉店間際、貼り紙こそしてあったが、知らずに入ってきたお客さんの「えっ…何このお店?」という顔は忘れられない。

ところが7月末に行われる花火大会の会場が近くだったため、ファストフードなどは多少準備しなければならなかった。

閉店準備をしているところに、花火大会などという真逆の“ハレ”イベント。

そこにはいつもよりたくさんのお客さんと、その来店を素直に喜べない私たちがいた…。

 

だから私は、花火大会って好きじゃない。

夜空にどれほど美しい花火が咲き誇っても、よみがえるのはわびしい記憶ばかりだからだ。

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